
embraceは2004.08.25にリリースされたアルバム「ユグドラシル」の5曲目に収録されている。
embraceは抱擁という意味の言葉。この曲を聴いている君を抱きしめるよと唄っているのだけど、当時の私はそういう聴き方ができていなかったので、藤くんの誰かに対する気持ちなのだと思っていた。
それを自分に言ってもらっていることにして、勝手に借り物をしているような感じで聴いていた。大体ぜんぶ、そうやって聴いていたのだけど。
自分と自分を取り巻く世界にいつも思う温度っていうのは。ほんとに温もり以外は信用していないところがあります、僕は。それ以外のものは、なにか落とし前をつけないと信用できない部分がありますね、やっぱり。だから電車に乗るっていう作業。俺がそこにいていい理由。それは俺がちゃんとお金を払って切符を買ったから、っていうところで信用できます。温もり以外のものは、そうやって信用するしかないんです
ROCKIN’ON JAPAN 2004年9月号より
こういう感覚を持っている藤くんが、音楽で人と繋がろうとすることを痛々しいほどに真摯にしている。曲という形にしてリリースして、その反応も受け止める。そんな生き方をしているということに尊敬と感謝を感じる。
私にはどうして温もりだけが確かなものだと思えるのかわからない。
何かの雑誌のインタビューだったと思うのだけど、「触るというのは確かなものだと思う」と藤くんが言っていた。温もりというのは五感のひとつである触覚と同じく皮膚感覚のひとつ。
考えていると、私にとっての確かなものは何なのかがわからなくなってくる。
気持ち。それが一番確かな気がする。
一番に思い浮かぶのはBUMP OF CHICKENへの気持ち。つまりそれは(悲しいけれど)自分への気持ちということ。
全ては私の思い込み。
藤くんの言っている温もりというのは、温度計で計測可能なそれのことなのか、それとも皮膚を通さず心で感じる温もりのことなのか、どちらなのだろう。
音楽には皮膚で感知する温度はない。心で感じる温もりだ。
このembraceで「撫でてやるよ」「キスをするよ」と言うのだけど、それは物理的なものではない。そういう気持ちでいるよということなのだと思う。
そう思って歌詞を見てみよう。